おふとんの日常

blue-pink-sky’s diary

異端児...異端老兵...?

 

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<阪神8000系8523編成 Nikon Z7+FTZ+AF-S70-200mmF/2.8E FL ED VR>

 

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<阪神8000系8523編成 Nikon Z7+FTZ+AF-S70-200mmF/2.8E FL ED VR>

 

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<阪神8000系8213編成 Nikon Z7+FTZ+AF-S70-200mmF/2.8E FL ED VR>

 

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<阪神8000系8243編成 Nikon Z7+FTZ+AF-S70-200mmF/2.8E FL ED VR>

 

阪神8000系をご存知だろうか。鉄道にある程度興味がある人ならそりゃ知ってるよという感じだろう。阪神8000系1984年から1995年にかけて(震災代替車を含まず)製造された阪神電車の優等用車両である。その在籍本数は非常に多く、阪神電車と言えばこの車両、というくらいよく見かける車である。しかし特筆すべきこととして、この形式は(比較的)近年の車両にしては非常に珍しいほどの形態差を持っていることが言えるだろう。そもそも製造時のパターンが俗にいうタイプIからタイプIVまでの4パターンが存在している上に、阪神淡路大震災によって被災し、編成組み換えと代替新造が行われたため、さらに言うなら後年のリニューアル時に車内改造も行われたが故にこの車両はなんともカオスな編成形態を持っている。

 

さて、カオスな車両として鉄道に詳しい方なら真っ先に挙げるであろう車両が8523編成(写真の1,2枚目)。ここで律儀に写真を確認しに行った方なら疑問に思うのではなかろうか。そう、1,2枚目と書いたのに1枚目と2枚目には全く違う見た目の車両が写っているではないか。目がいい人ならさらに前と後ろで主に窓まわりの車体構造が異なることにもお気付きなのではないだろうか。......そう、これこそ震災による被災車の生き残りなのである。

 

先ほど8000系にはタイプIからIVが存在すると言ったが、それぞれの違い(と言っても僕は電気周りや足回りは詳しくないので見た目で分かる範囲で)を軽くご説明するなら、

 ・タイプI    旧来の阪神電車の顔、2段窓

 ・タイプII   新しい顔、分散冷房、1段下降式窓

 ・タイプIII  集約分散冷房、顔が少し縦長に

 ・タイプIV  側面窓が連続窓風に

と言った感じである。細かい差異はあれど、見た目でわかりやすく尚且つ今も更新などされずに残っている特徴としてはこんなところなのではなかろうか。ところが実は初期車というのはまあまあレアで、タイプIは1編成、タイプIIは3編成の製造であった。ところが阪神淡路大震災によって8000系は11編成が被災。その中にはタイプIとIIが2編成含まれていた。幸い(?)タイプIIの8215編成は全車復旧を果たしたものの、タイプIの8201編成、タイプIIの8213編成はそれぞれ編成の3両を失うことに。

 

8201編成に関しては方向転換、改番を行い同じく被災車である8223編成(タイプIII)の中間車2両、そして代替新造車である8523号車を組み込んで新8523編成となった。この編成、元々梅田寄り3両に組成されていた8201編成の8201-8102-8002を方向転換、改番(→8102-8002-8502)して組成したため顔は前後で違う、車体構造もタイプIとIIIの混結のため車体の高さも窓のタイプも異なる、本来の付番方式から逸脱しまくりというトンデモ編成が出来上がったのである。そもそも他の8000系は82xx編成(xxは奇数)という編成番号なのにこの編成だけ8523編成というよく分からない編成番号になっているのである。これだけのことをしてまで(新8502号車に関しては先頭車としての向きが変わってしまったために改番時に床下機器をそのままひっくり返して他の車輌と配置を揃えるという大規模な工事まで施工されている)廃車にせず使える車両を使うというのは震災によって苦しめられた阪神の、なんとも苦い決断が見えるような気がする。

ちなみにこの8523編成はその特異な車体構造のせいで長らく直通特急運用に入らなかったが、現在ではその縛りは解除され他の8000系同様元気に走り回っている。僕は阪神淡路の時にはまだ生まれてすらいなかったが、震災を経験している車両ということで少しでも長生きしてほしいものである。

 

さて、話はこれで終わりかというとそうではなく、8000系には鉄道ファンに非常に有名な8523編成と対称的にそこまで有名ではない(※当社調べ)珍ドコ編成がもう1編成いる。それは8213編成である(写真3枚目)。上でタイプごとの分類を書いた際にタイプIIの8213編成が被災し3両を失ったことを述べた。この車両はではどうなったかというと、同じく被災編成である8217編成(タイプIII)の復旧車4両と編成を組んで新8213編成となった。復旧車が合計3両と4両で7両と両数が合わないのは旧8213編成の復旧車が梅田寄り2両と神戸寄り先頭車1両であり、この神戸寄り先頭車はまた別の復旧車(8221編成:先頭車1両が廃車)と組んだためである。タイプIIとIIIは冷房装置の変更により車体高が異なるので見た目で明らかな違いがあるが、そんなタイプIIとIIIが編成を組んで走っているのが現在の8213編成である。写真3枚目でも車体高の差が見て取れるだろう。こちらは先の8523編成に比べると顔が大きく異なるわけでもなく(そもそもあちらの下り先頭車は唯一無二の顔となったわけだし)、あちらは3両と3両なので写真にしてもわかりやすい。が、8213編成は2両と4両なので2両側が先頭になる梅田行きでないと写真にしたときに分かりにくいという難点がある。実際3枚目の写真も言われれば高さが異なるが、特段言われなければ気付かないくらいの差である。

 

つまるところ、上に挙げた写真は上から順にタイプI、タイプIII、タイプII、タイプIVの形態なのである。皆さんはどの形態が一番好きだろうか。僕はタイプIかIIIだが、タイプIの顔は下り向きでしか撮れず、しかも曇りだと微妙、そうなると阪神線内の駅撮りか直特運用に入ったときの山陽線内のごく限られた撮影地しかない。今回は偶然にも直特運用を引けたものの天気に恵まれず没カットとなってしまったが、こればかりは負けじとリベンジに出向きたいものである。一見すると数が多く非常につまらない被写体の阪神8000系であるが、よく見てみると編成内にバリエーションがあって面白い編成に出会えるかもしれない。震災は悲しい出来事である。ただいつまでもそれをネガティブに捉えるのではなく、どのような経緯であれこのような趣味的に面白い車両がいるのだからそれを詳しく見てみるというのもまた面白いのではないだろうか。